苦笑い [見聞録]
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ウチの近所のスーパーの出入口の脇には、テーブルとイスが置いてあります。
出入口を出たすぐ外に置いてあるのです。
かなりの人数が座れるぐらい置いてあります。
なぜかというと、そのスーパーで買った弁当やお菓子をそこで食べてもいいように設置してあるのです。
しかし、いかんせん外なので、そこで何かを食べていると鳩が寄ってくるのです。
食べ始めるとすぐにどこからともなく飛んできて周りを歩き始めます。
ある日の朝、私はそこに座ってアイスコーヒーを飲んでいました。
お昼時には結構混み合うのですが、朝の10時頃でしたので、
そこに座っていたのは私と知らないオジサンの2人だけでした。
私と知らないオジサンとは少し離れたテーブルにそれぞれ座っていました。
オジサンは何かを食べているわけではなさそうでしたが周りにはたくさんの鳩が集まっていました。
オジサンは集まってきている鳩に向かって蹴るような仕草をして追い払っていました。
私は
うわ~、鳩があんなに寄って来ちゃってあのオジサンいやなんだな~
と思って見ていました。
しかし次の瞬間、目を疑いました。
オジサンは鳩のエサをパラパラと撒いていたのです。
だから鳩があんなに集まってきていたのです。
それにしても自分でエサを撒いておいて、そこに寄ってきた鳩を追っ払うとは!
いったい何をやってるんだこのオジサンは、と思いました。
しばらく見ていてなんでそんなことをしているのかが分かりました。
集まって来ている鳩の中に1羽だけ足の悪い鳩がいるのです。
その鳩が他の鳩に遅れをとってしまいエサを食べられないでいるのです。
そういえば他の鳩に比べて少し痩せている感じです。
ですのでオジサンは足の悪い鳩にエサをあげたいと思って、蹴るような仕草をして他の鳩を追い払っているというわけです。
なるほど~、そういうことか~。
オジサンの蹴る仕草はますますエスカレートしていきました。
残念なことにオジサンの仕草は鳩たち全員に脅威を感じさせてしまったようです、足の悪い鳩さんにまで。
そのせいかエサがまだあるのに鳩たちはいっせいに飛び去っていってしまいました、足の悪い鳩さんもそれにつられて飛んで行ってしまいました。
足の悪い鳩さんにオジサンの真意は伝わらなかったようです。
オジサンの周りは静かになりました。
と思ったら、1羽だけ残ってエサを食べている鳩がいました、
もちろん足の悪い鳩さんではありません。
丸々太った健康そうな別の鳩です。
オジサンはもう蹴る仕草はしませんでした。
やがてその鳩は地面にあるエサを全部たいらげました。
オジサンは追加のエサを撒きませんでした。
まるで、君のような丈夫そうな鳩は自分でエサを探しなさいというように。
しかし鳩はオジサンのそばを離れません、それどころかオジサンとジーッと目を合わせています。
まったくしょうがないな~、という感じでオジサンは苦笑いしながらエサをパラパラと鳩の前に落としました。
鳩はそれも全部たいらげました。
そしてまたオジサンのことをジーッと見ます。
オジサンは苦笑いしながらまたパラパラとエサを落としました。
やがてその鳩はお腹いっぱいになったようです、
しかし飛び去らずにトコトコ歩いてオジサンから少し離れたゴミ箱の後ろに慣れた感じで座り込みました。
まるで誰かがここで弁当などを食べ始めようものなら一早く駆け付けられるようにといわんばかりに。
オジサンはそれを見てまた苦笑いしていました。
結局、こういう鳩ちゃんに一番たくさんエサをあげちまったな~というように。
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